書籍紹介(シゲルとハルの物語)

大きな山の麓にある、湖の近くに、一軒の小屋があった。その小屋は、木でできた、ほんの小さな小屋だったが、そこには、仲の良い夫婦が住んでいた。 その夫婦は、しばらくすると、子どもを授かった。子どもの名前は、シゲルとハル、双子の男の子たちだった。二人は、仲の良い夫婦の手で、大切に育てられた。

数年が経った―

朝の日差しが、湖面をキラキラと光り輝かせていた。その光をすくって集めるかのように、女性が水を汲んでいた。女性は、持っていた入れ物一杯に、水を満たすと、それを背負って、歩き出した。木々は、朝日を受けて、その葉を生き生きと空に伸ばしていた。小鳥たちが、朝の挨拶を交わすかのように、さえずっていた。 女性は、扉を開けた。 「おかえりなさい、母さん」 中から可愛らしい声が聞こえた。 「ああ、ハル、起きていたのかい?」 女性は、少し驚いた顔をしながら、でも嬉しそうに、子どもの方を見た。 「うん」 ハルは、はにかみながら答えた。 母親は、背負っていた入れ物を、部屋の隅にある甕の方に持っていくと、その中に、水を注いだ。 「言ってくれれば、僕も手伝ったのに」 ハルが側に寄って来て、母親の後ろから覗き込むように言った。「いいのよ。ハルは、まだ子どもなんだから。しっかり眠っておきなさい。シゲルみたいに」 母親は、顔を上げ、まだ居間で寝ている、もう一人の子どもを見ながら言った。ハルも母親の視線を追った。シゲルの手足は、布団から飛び出していた。





シゲルとハルの物語